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《予防》健康診断について(原文版)

2026年3月12日

去年の秋に、山下公園で獣医師会の無料相談会に参加してきました。午前中だけでも何人もお話ができて新鮮で楽しかったです。今回その中で結構多かった「そろそろ歳をとってきたから、健康診断をしたいと思うのだけど、何をしたら良いかしら?」とのご質問について、私見を多分に踏まえて書かせて頂こうと思います。

 

なんでこの質問が出たのか?って考えたのですが、そうなんですよね。人みたいに決まってないんですよね。

人だと、お仕事をしている方(条件はありますが)、学生さんに関して言えば、法律上こういった項目の健康診断を定期的に受けて下さいねってあるんです。お仕事をされていない方でも、女性だったら市からがん検診推奨の案内が来ます。

ウチの会社のスタッフも私も毎年行っています。私も人の病院さんに、「企業検診を受けたいです」と、お問い合わせをしたことがありまして、「何の検査を受けたいの?」って聞き返されました。「いや、企業検診をですね・・・」と色々お話を聞いてみると、最低限の項目は決まってはいるけど、企業によってはより広い項目で検査を受けられているところもあるとのこと。なるほど、と思いました。一方犬猫には、法律・ガイドライン上、ペットショップやブリーダーなどの業者さんは、獣医師による定期検診が義務付けられているものの、一般の飼い主さんは、推奨されているというレベルなのです。

 

明確な公的な答えがないから、質問が出るんですよね

 

法律では決まってはいないのですが、一応準公的な指針として、日本獣医師会とアメリカの獣医師団体(AVMA)の推奨事項を書いてみよと思います。(英語を翻訳しているので、間違っていたらすみません。)

 

日本獣医師会

  • 日本獣医師会は 一般の飼い主向けに年1回の定期健康診断を推奨
  • 推奨内容の例:
    • 体重・体温・心拍・呼吸のチェック
    • 血液検査(肝臓・腎臓・貧血など)
    • 尿検査
    • 便検査
    • 歯や口腔、皮膚、耳、目のチェック
  • 高齢犬・猫の場合はより詳細な検査が推奨されます。

 

American Veterinary Medical Association (AVMA)

  • 健康な犬・猫は年1回の定期健康診断を推奨
  • 高齢ペットは年2回以上が望ましい
  • チェック内容の例:
    • 体重、体温、心拍、呼吸
    • 歯・口腔・皮膚・耳・目のチェック
    • 血液検査、尿検査、便検査
    • 必要に応じて心臓や腫瘍のスクリーニング

※スクリーニングとは、症状のない人や健康な人から、病気の疑いがある人を選別する検査のことで、人ではマンモグラフィーが有名ですね。スクリーニングの段階では、怪しいよねってことがわかり、そこから病理組織生検、つまり出来物を採取して顕微鏡で観察することで、多くの場合は確定診断が出ます

 

これを推奨する理由としては、定期的に健診を受けられる犬猫の方が、そうでない犬猫よりも、長生きする傾向があるという報告もあるからです。

 

なので、年に1回、問診と身体検査と、血液検査、尿検査、便検査を受けられることが、一般的な推奨事項なのかなと思います。

 

 

次に、血液検査の内容についてなのですが、これは大体人と似た内容が推奨されています。偉い先生達が、若い子なら最低限こういった項目、健康な成犬・猫ならこういった項目、高齢犬猫ならこういった項目と、提案されており、多くの先生の支持を受け、検査を専門に取り扱う機関などでも推奨されています。健診パッケージのようなものが存在します。

あとは、それぞれの動物病院の、獣医師の考えでも、内容が変わってきます。

 

 

ここからは私見を多分に踏まえた内容となります。

健康診断で何をするのが一番おすすめですか?と聞かれたら、最近流行りのコストパフォーマンス(コスパ)を考えると、一番は問診と身体検査だと思います。

 

話が飛んでごめんなさい。私の恩師の1人、故H先生が、飼い主さんとの電話にて、こうおっしゃったのを今でも記憶しています。「診察料で1000円(当時)だけお持ち頂ければ、色々とご相談だけでもお受けしておりますので、ぜひいらしてください。」

この言葉を聞いて、正直最初に思ったのは、「先生、消費税計算し忘れてる、後で突っ込まれないかな・・・」だったのですが、まあまあそこは良いとして、後で色々と考えてみて、診察料だけで、問診と身体検査して、専門家から色々とお話受けられるのって確かにお得だなって思いました。

 

腕の良い先生だと、本当にこれだけで、かなりのことを当ててきます。びっくりします。たぶんこれだけでも、相当な価値があると思います。コスパは最強かもしれません。例えば犬猫の3大疾患の心臓病では、聴診がすごく役に立ちます。早期発見の一番のツールだと思います。ワクチンの時などに、一緒にお話を聞いてみても良いかもしれません。(体調が悪い時は、ワクチンはうてません。体調が悪い時は、様子を見すぎず、普通に診察を受けて下さい。)

 

 

次にコスパが良いかなと思うのは、血液検査+尿検査です。犬猫の3大死因は、順序は違いますが、①がん、②心臓病、③腎臓病です。②は心臓の雑音で早期発見できるケースが多いです。③は猫では死因のトップですが、血液検査と尿検査が圧倒的に強いです。昨今では、昔と違い、SDMAやシスタチンCなどと言った、腎臓病の早期発見の項目が出ましたので、早い段階での発見が可能となりました。

 

あとは、レントゲン検査と超音波検査がその次で、余裕のある方は積極的にやられると良いと思います。若いうちに一回、明らかな先天的なトラブルがないかをチェックしておく。歳をとった時の比較対象にもなる。そしてある程度歳をとったら定期的に、検査を受けられるというのが割とスマートなのかなと考えています。

若い子で、問診でも身体検査でも血液検査でも尿検査でもわからないし、本人は全く元気でご家族も全くわからないトラブルを抱えているケースが時々あります。それは実は健康寿命や寿命に大きな影響を与えるトラブルであることもあります。例えば、生まれながらに片方腎臓がないや小さい、肝臓が小さい、股関節の形態がおかしい、横隔膜ヘルニアがあるなどです。なので若い時に一度検査を受けてみて、問題が何もないなら、7歳位、人での40歳位、人でも色々な病気が増えてくるあたりで、定期検診に組み込むのもアリかと思います。

 

健康診断としての便検査は、子犬ちゃん子猫ちゃん、外猫ちゃんの検診ではすごく推奨です。寄生虫がいるケースがありますので。身体検査の次くらいに推奨です。

 

歯科検診も個人的には強く推奨しております。こちらは別のブログを参考頂けば幸いです。あとは特殊なモノとして、中医学での体質診断などもあります。

 

ここで、健康診断の限界にかかわる部分についても書かせていただきます。

そもそも何で色々な種類の検査があるのでしょう?

それは単純に1つの検査ではわからないからです。

話を聞いていると、「血液検査をすれば全てがわかる」みたいに考えていらっしゃる飼い主さん、たぶん一定数いらっしゃいます。

いえ、もちろん全部はわかりません。

血液検査でわかるのは、血液検査でわかることだけです。

残念ながら骨折という重大なトラブルがあっても、血液検査ではわかりません。

骨折に伴い筋肉の損傷や、炎症が起こっている可能性はわかるかもしれません

 

たぶんドラえもんの「お医者鞄」があれば最強なのだと思います。

アレがあれば、すぐにでもお取り寄せしたい位で、1つの検査キットで、全てがわかるという優れものです。治療薬まで出てくるので、お医者さんがいらないかもしれないという凄まじい性能を誇ります。

でも、私も今のところドラえもんには出会えていないので、色々な検査をして、病気がないかをチェックします。それでも各検査には限界があるので、漏れが出てしまうことがあります。

 

健診をすれば、全てがわかるということではないのですが、それでもやはり、様々な病気の早期発見につながり、健康寿命や寿命を伸ばす大きな助けになりますので、とても重要なことだと思います。

 

 

三大疾患のがんの健診についてですが、がんは本当に厄介です。

 

がんマーカーってあるじゃないですか?と時々聞かれますが、確かにあるんですが、私が知りたい情報が得られないことが多いので、現状では特殊な条件じゃないとあまり利用していません。

がんマーカーが陽性ですってなった時に、がんの可能性も十分にありますが、がんじゃない可能性も十分ありますとか、がん体質らしいというのはわかった。けど今がんなのかはわからない。ある可能性も十分にありますとか。

それって、いっそのこと全身的にCT検査などをした方が早いのでは?と、なってしまいます。CT検査ももちろん万能ではなく、ある程度の大きさの出来物が検出される可能性があるという検査です。費用もかかりますし、動物の場合には基本的に全身麻酔が必要です。更にできものがあったから、直ちに「がん」ではなくて、できものを丸ごと摘出するかして、病理組織検査を実施して。初めて確定診断が出ることがほとんどです。それってつまり手術ということになります。本当に手術が必要なのかもわかりません。手術をするべきかの、当たりをつけるためには、場所にもよりますが、針を刺すなどして、できものの細胞を採って調べるという細胞診という追加検査を実施することも多いです。

私としては、そういう大掛かりことをしなくても、採血や採尿で簡単に検査材料が取れて、そのマーカーが陽性なら、100%近く治療をした方が良い悪性のがんがあります。陰性ならほぼ100%悪性腫瘍ではありません。ということがわかって、もしできたら場所や種類まで特定してくれると嬉しいです。

それは、私の知る限りでは今のところ実用化はされていないと思います。

 

そもそもがんについてですが、

犬猫や人の体には何兆個もの細胞があり、健常な犬猫でも毎日たくさんの細胞が死んでおり,細胞分裂によって即座に補充されています。しかし、長い年月の環境変化や発がん性物質などにより、細胞の設計図である遺伝子が傷つくと、細胞の複製ミスにつながり、これが突然変異と呼ばれる現象で細胞が無制限に増殖し、がんが発生すると考えられています。がんは実は若い時から、毎日発生しているのですが、体内の免疫細胞達が除去をしています。

 

この無制限に増殖した細胞つまり「がん細胞」を、簡単に種類分けすると、命を奪ってしまうようなものが、悪性腫瘍と呼ばれ、命には影響がないものを良性腫瘍と呼びます。経験的なものになりますが、犬猫も長生きしていると、がんになることは多いです。良性、良性と来ても、最後には悪性となることも多いです。もちろん悪性だから命を落とすのですが。犬猫が最後に命を落とす悪性腫瘍は、1〜2ヶ月前には、身体検査でも画像診断でもわからなかったものが、急激に大きくなり、1〜2ヶ月後には、末期がんですというパターンが多いです。ゆっくりと進行するパターンももちろんあります。猫ではリンパ腫が多いです。避妊手術をしていない雌猫は乳腺癌が多いです。犬の場合は、脾臓の血管肉腫というがんや、同様にリンパ腫というがんが多いです。発見した時にはすでに食欲がない、元気がない、転移をしているというような末期状態が多く、数ヶ月で命を落とすパターンも多いです。これは悪性度の高いがんです。実は健康診断では、悪性度の高いがんの早期発見はメインの目的にはしていません。健康診断で早期発見を狙っているがんでのメインターゲットは、半年〜2年くらいかけて命を奪う悪性度ややや低めの悪性腫瘍です。肝細胞癌は1つかもしれません。早く見つけて手術をすると治る可能性が十分にあるとされます。

もちろん急激な進行をする悪性腫瘍も、早期発見・早期治療が望ましいです。ただ発生と進行が早いので、毎月のように健康診断をすることが、現実的なことなのか?という疑問が生まれます。なので、急激な進行をする悪性腫瘍の早期発見を一般の健康診断ではメインのターゲットとはしていないのです。特に胸の中や、お腹の中でできるものについてはそうなります。ただ体の表面にできるものに関しては、ご家族の普段からのチェックで早期発見につながる可能性があります。

じゃあ、がん検診が無駄か?というとそうではなく、がんのリスクを上げる生活習慣病の早期発見により、がんのリスクを下げられる可能性が十分にあります。

 

 

動物病院なのでもちろん仕方がないのですが、病気になって病院に来られる方は多いです。もちろん一生懸命対応しています。ただその子達が病気にならないでいられる方法はなかったのか、何か事前にアナウンスできなかったのか、とよく自問しております。なるべく病気にならないように元気で長生きして欲しいと思っております。健康診断は、元気で長生きをしていく、大きなお手伝いになるのではないかと思っております。

最後に、今回は私見を多々ふまえて書かせて頂きました。先生によって色々なお考えがありますので、担当の先生ともよくご相談してみてください。