神奈川県横浜市都筑区仲町台5丁目2−25
ハスミドミトリー001
2025年3月28日
慢性腎臓病の治療の続きですが、今回はもうちょっと具体的な治療内容について書かせて頂きます。
慢性腎臓病の治療にはガイドラインが存在します。IRISという団体さんが出されているガイドラインです。大体下記のような内容となります。
私個人は、このガイドラインをベースに考えて、その子毎にご家庭毎に相談しながら、治療内容をアレンジしております。ガイドラインに載っていない医薬品、サプリメント、漢方薬なども、ご相談の上で処方させて頂いていることもあります。
ステージ | 残存腎機能 | 血清クレアチニン(mg/dL) | SDMA (µg/dL) | 平均余命 | 主な治療目標 | 推奨される治療・管理 |
ステージ1(初期) | 約100%〜33% | 犬:<1.4、猫:<1.6 | >14 | 犬:約400日以上 | 早期発見・進行抑制 | ①腎臓に負担のかかる持病の治療・予防(尿路結石の予防や、尿路感染、高血圧のコントロール)
②腎臓に負担がかかる薬や、食べ物(高タンパク食)をなるべく控える ③定期的な健康診断(SDMA・クレアチニン・尿タンパク、血圧などのモニタリング、画像検査) ④水をよく飲めるようにする ⑤トイレを我慢しないようにする |
ステージ2(軽度) | 約33%〜25% | 犬:1.4–2.0、猫:1.6–2.8 | 18–25 | 犬:約14.78ヶ月 | 進行抑制 | ステージ1に加えて
① 療法食(低リン・低タンパク食) ※ステージ1は高タンパク食を控えるでした、低タンパク食を推奨 ② リン吸着剤の使用 |
ステージ3(中等度) | 約25%〜10% | 犬:2.1–5.0、猫:2.9–5.0 | 26–38 | 犬:約11.14ヶ月 | 進行抑制・症状緩和・生活の質向上 | 臨床症状が出るので、ステージ2までの治療に加え、症状を緩和する治療が追加される
① 貧血対策(エリスロポエチン投与) ② 電解質異常(カリウム補充など)管理 ③ 皮下輸液(脱水治療・防止) ④制吐剤・胃酸抑制剤(吐き気の緩和のため) ⑤食欲増進剤 など |
ステージ4(末期) | 約10%以下 | 犬・猫:>5.0 | >38 | 犬:約1.98ヶ月
猫:約3ヶ月(中央値103日)、 |
症状の緩和・生活の質の向上>進行抑制 | ステージ3までの治療に加え、栄養と水分投与と投薬のサポートのために、栄養チューブを検討 |
・上記で書かれている平均寿命は、文献や臨床データからのもので、同じ慢性腎臓病でも、その子その子の体質や状態、慢性腎臓病の原因、ケア法によって大きく変動します。
・前回も書かせて頂いた通りなのですが、このガイドライン通りに全てを実施することが、正しいというわけではなく(ガイドラインも時々アップデートがあります)、動物とそのご家族の数だけの正解があると思います。ご家族とかかりつけの獣医師ともよくご相談しながら、治療を受けられることをオススメいたします。
・慢性腎臓病は、寿命や生活の質に影響する病気で、基本的には治らない病気であり、進行性の病気です。
・早期発見・早期治療で寿命が伸びるという様々なデータが出ております。ステージ2までは基本的には症状がわかりにくい、もしくは症状が出ません。お仕事をされていらっしゃる、学校に通われている方なら毎年1回は健康診断を受けられると思いますが、わんちゃん、猫ちゃんも若いうちには年1回くらいは、血液検査や尿検査などを受けられることをオススメします。またわんちゃん、猫ちゃんは1年で4〜5歳くらい歳をとりますので、7歳を超えてくれば、余裕のある方は年に2回くらいの検診を受けられることをオススメします。