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《整形》膝蓋骨脱臼・足が痛そう・足をあげて歩く・スキップする

2023年10月6日

膝蓋骨とはいわゆる「膝のお皿」のことで、英語ではpatellaと呼ばれ、膝蓋骨脱臼はpatellar luxationと呼ばれます。よくある病気のため「パテラ」という通称で呼ぶ方も多いです。

膝蓋骨脱臼は、「膝蓋骨が膝の正面の本来の位置からずれること」を言います。内側にずれたら膝蓋骨内方脱臼、外側にずれたら膝蓋骨外方脱臼と呼びます。両側に脱臼する子も時々います。脱臼の状態を一般的に4段階で評価します。

↑膝関節の構造(外側から見た時)

↑膝蓋骨

↑膝蓋骨と靭帯を外してみた時の構造

 

【膝蓋骨脱臼のグレード分類】

◯グレード1

膝蓋骨は正常な位置にあり、足を伸展させて膝蓋骨を指で押すと脱臼するが、手を離すと元に戻る。

◯グレード2

膝関節は不安定で、膝蓋骨は脱臼したり、元に戻ったりしている。脱臼は指で押すと元に戻すことができる。

◯グレード3

膝蓋骨は常に脱臼状態にあり、指で押せば元に戻るが離すとすぐにまた脱臼する。

◯グレード4

膝蓋骨は常に脱臼状態にあり、指で押しても元に戻らない。

↑膝蓋骨内方脱臼グレード2の犬のレントゲン写真

↑レントゲン写真の模式図

同じワンちゃんの写真ですが、左側は普段はまっている状態で撮影しています

右側はわざと脱臼させて撮影をしています。赤丸が膝蓋骨です。

基本的には触診で診断が可能ですが、レントゲン撮影をすることで、脱臼の重症度や骨の変形などの判定の手助けとなります。

 

【膝蓋骨脱臼の症状】

◯時々後ろ足を挙げてスキップするように歩く

◯寝起きに後ろ足を挙げたり伸ばそうとしたりする

◯散歩をあまり喜ばなくなる、長い距離を歩けなくなる

◯歩いている時や抱っこしようとすると突然キャンとなく

◯膝からパキパキと音が聞こえる

◯足をひきずる、痛がる、歩けなくなる

 

 

【膝蓋骨脱臼の治療】

◯手術

膝蓋骨脱臼は物理的な、構造的な問題ですので、これを大きく改善させることができる方法です。手術の方法(手技)はいくつかあり、患者さんの足の状態に合わせ、それらの手技を組み合わせて実施されます。獣医師によって選択される手技が異なることもあるかもしれません。

<当院で行っている手術手技>

①縫工筋と内側広筋の付着部位を移動することで内側に引っ張る力のモーメントを減らす。

②滑車溝という膝蓋骨が動くレールを深くする。

③関節を包んでいる関節包の緩みを縫い縮める。

④膝蓋骨は膝蓋靭帯が上手く動くための構造の1つですが、その膝蓋靭帯の付着部位が内側にねじれてしまっている子もいるので、付着部位である骨を一部切って移動させる。

大まかには以上ですが、その子その子で、少しずつ足の形が違うので、その子に合ったように微調整をしていきます。

↑手術前のレントゲン写真 両側の膝蓋骨内方脱臼グレード3と4のワンちゃん

↑膝蓋骨が外れており、靭帯の付着部位のねじれが大きいことがわかります

 

↑①〜④の手技を使って手術をしています。膝蓋骨が滑車溝にハマり、足が真っ直ぐになっていることがわかります。

↑同じ子で手術前の横から撮った膝のレントゲン写真

↑膝蓋靭帯は骨に付着しているので、骨の一部を切って、場所をずらしてピンで止めています。足の痛み等の症状は比較的早く改善するケースが多いですが、このように骨を切った場合はくっつくのに時間がかかりますので、しばらくは安静が必要です。

 

あるデータでは手術後に再脱臼がなく良好に過ごせるケースが9割以上とされています。後日ゆるみ等が出るケースもありますが、再手術が適応とされるケースは数%程度とされています。

手術をした方が良いかどうかの判断は、飼い主さんによってもですが、実は獣医師によっても意見が分かれる難しい部分です。

膝蓋骨内包脱臼を持つ小型犬の中には、普段の生活に不便を感じていなさそうな子もいます。健康診断で指摘されて初めて知ったということも多いです。そういった時に積極的に手術をすべきかどうか・・・?色々なデータがありますが、当院で手術を実施しているケースの多くは、症状のある子です。足をひねって脱臼の度合いがひどくなり、脱臼する度に痛がってキュンキュンないている。足が痛いのか座らずにずーっと立っている。また痛み止めを与えても改善がイマイチであるような見ていて可哀想になる子は、飼い主さんも何とかしてあげたいということで、積極的に手術を選ばれるケースが多いです。

 

◯抗炎症剤や鎮痛剤などの医薬品、関節のサプリメント

抗炎症剤や鎮痛剤などの医薬品や関節のサプリメントは、膝蓋骨脱臼の根本的な治療というわけではないですが、痛みが出た時によく実施される治療です。以降も脱臼はするけど痛みは一時的なもので改善するということもあります。定期的に症状が出るケースもありますが、近年は症状を抑えるために長期的に続けても副作用の少ない鎮痛剤もあります。サプリメントは関節だけではなく、その他の幅広い部分の不調に効くものが出ています。

 

◯体重管理と足が滑らないようにする

痛みなどの症状が出てからもですが、症状が出る前にやっておきたいケア方となります。

肥満は足への負担が増加しますので注意が必要です。単純に足の負担だけでなく、生活習慣病の原因となり、二次的に足に異常をきたしてしまうこともあります。万病のもとですので、体重管理は健康管理の第一歩と言えるかもしれません。

滑りやすい場所で走り回るのはあまり推奨されません。マットを敷くなどの対策をするとより安全です。肉球に毛がかかっているとこれも滑ってしまうので、定期的にお手入れをすると良いです。

 

◯鍼灸

当院では、膝蓋骨脱臼の治療として、鍼灸治療も行っています。他院にて手術をしたけど足の調子が思わしくない。足の調子がイマイチで高齢で手術は体力的に難しいなどの子達が、受けています。

 

今回、膝蓋骨脱臼でも内方脱臼の治療をメインで書いております。まだまだこれが完璧な治療法だというものはありません。専門医の先生の中でも意見が分かれることはよくあります。私も少しでも良い治療を提供できればと日々勉強していますが、その子その子で構造と症状の出方が違い、それに伴い治療も違ってくるので、とても難しいトラブルだなと思っています。悩まれる方が多いトラブルなので参考になればと思い書いてみました。足の動きがおかしいなと思った時は、まずはかかりつけの先生とよく相談してみて頂ければと思います。