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《予防》犬猫の健康診断って何をしたら良い?〜健診の限界と意義〜 (要約版)

2026年3月12日

去年の秋、山下公園で開催された獣医師会の無料相談会に参加しました。午前中だけでも何人もの飼い主さんとお話できて、とても新鮮で楽しかったです。

その中で多かった質問が、「そろそろ歳をとってきたので、健康診断をしたいけれど、何をしたら良いですか?」という内容でした。今回はこの質問に基づき、私見も交えて犬猫の健康診断についてまとめてみます。


なぜ犬猫の健康診断は人と違うのか

人の場合、仕事や法律に基づき、定期健康診断やがん検診の受診が決まっていることがあります。学生さんや働いていない方でも、市町村から検診案内が届くことがあります。

一方、犬猫には法律で決まった定期検診はありません。ペットショップやブリーダーなどの業者では獣医師による定期健診が義務付けられていますが、一般飼い主さん向けは「推奨レベル」に留まります。

明確な公的な答えがないため、「何をしたら良いですか?」という質問が自然に出るわけです。


推奨される健康診断の内容

日本獣医師会の指針

  • 年1回の定期健康診断を推奨

  • 例として以下の項目が挙げられます:

    • 体重・体温・心拍・呼吸

    • 血液検査(肝臓・腎臓・貧血など)

    • 尿検査

    • 便検査

    • 歯・口腔・皮膚・耳・目のチェック

  • 高齢犬・猫はより詳細な検査が推奨されます

アメリカ獣医師会(AVMA)の推奨

  • 健康な犬・猫:年1回

  • 高齢ペット:年2回以上が望ましい

  • 内容例:

    • 体重、体温、心拍、呼吸

    • 歯・口腔・皮膚・耳・目

    • 血液・尿・便検査

    • 必要に応じて心臓や腫瘍のスクリーニング(※症状のない健康な動物から病気の疑いを選別する検査)

研究によれば、定期的に健康診断を受けている犬猫は、そうでない子よりも長生きする傾向があります。


コスパ重視のおすすめ順

私見を交えると、健康診断でまず重視すべきは「問診と身体検査」です。
腕の良い獣医師なら、これだけでもかなりのことを見抜くことがあります。

次におすすめは「血液検査+尿検査」です。犬猫の三大死因は順序は異なりますが、①がん、②心臓病、③腎臓病です。

  • 心臓病は聴診で早期発見できることが多い

  • 腎臓病は血液・尿検査が最も有効で、近年ではSDMAやシスタチンCなど、早期発見に役立つ項目もあります

さらに余裕があれば、レントゲン検査や超音波検査もおすすめです。若いうちに先天的な問題の有無を確認したり、年齢を重ねた時に比較対象として役立ちます。

便検査は、特に子犬・子猫や外猫の場合に寄生虫の確認として重要です。

歯科検診も重要です。こちらは別のブログを参考ください。


健康診断の限界

健康診断でできることは、あくまで検査ごとの範囲内です。

  • 血液検査でわかるのは血液の情報だけ

  • 骨折や一部の臓器の問題は、血液検査だけではわかりません

  • スクリーニングで「怪しい」とわかっても、確定診断には生検(細胞や組織の顕微鏡検査)が必要です

「全ての病気が一回の健診でわかる」と考えるのは間違いです。しかし、それでも様々な病気の早期発見につながり、健康寿命や寿命を伸ばす助けになります。


がんの健診について

がんマーカーは存在しますが、「陽性=今がんがある」ではなく、「陰性=がんなし」とも限りません。そのため、単独での確定診断には使えません。

  • 急速に進行する悪性腫瘍(乳腺癌、リンパ腫、脾臓血管肉腫など)は、発見時には末期の場合もあります

  • 健康診断の主な目的は、こうした急速進行がんの早期発見ではなく、リスク評価や生活習慣病の早期発見です

  • しかし、悪性度の低いがんや、幸運にも早期に発見できるケースもあり、健診の意義は十分にあります


まとめ

  • 犬猫の健康診断は法律で義務付けられていないため、内容は病院や獣医師によって異なります

  • 基本は年1回の問診・身体検査・血液検査・尿検査・便検査

  • レントゲン・超音波は余裕があれば追加

  • 歯科検診も重要
  • 健診には限界がありますが、早期発見・健康寿命延伸に大きな意義があります

  • がんマーカーやCTだけに頼らず、総合的に評価することが大切です

《予防》健康診断について(原文版)

2026年3月12日

去年の秋に、山下公園で獣医師会の無料相談会に参加してきました。午前中だけでも何人もお話ができて新鮮で楽しかったです。今回その中で結構多かった「そろそろ歳をとってきたから、健康診断をしたいと思うのだけど、何をしたら良いかしら?」とのご質問について、私見を多分に踏まえて書かせて頂こうと思います。

 

なんでこの質問が出たのか?って考えたのですが、そうなんですよね。人みたいに決まってないんですよね。

人だと、お仕事をしている方(条件はありますが)、学生さんに関して言えば、法律上こういった項目の健康診断を定期的に受けて下さいねってあるんです。お仕事をされていない方でも、女性だったら市からがん検診推奨の案内が来ます。

ウチの会社のスタッフも私も毎年行っています。私も人の病院さんに、「企業検診を受けたいです」と、お問い合わせをしたことがありまして、「何の検査を受けたいの?」って聞き返されました。「いや、企業検診をですね・・・」と色々お話を聞いてみると、最低限の項目は決まってはいるけど、企業によってはより広い項目で検査を受けられているところもあるとのこと。なるほど、と思いました。一方犬猫には、法律・ガイドライン上、ペットショップやブリーダーなどの業者さんは、獣医師による定期検診が義務付けられているものの、一般の飼い主さんは、推奨されているというレベルなのです。

 

明確な公的な答えがないから、質問が出るんですよね

 

法律では決まってはいないのですが、一応準公的な指針として、日本獣医師会とアメリカの獣医師団体(AVMA)の推奨事項を書いてみよと思います。(英語を翻訳しているので、間違っていたらすみません。)

 

日本獣医師会

  • 日本獣医師会は 一般の飼い主向けに年1回の定期健康診断を推奨
  • 推奨内容の例:
    • 体重・体温・心拍・呼吸のチェック
    • 血液検査(肝臓・腎臓・貧血など)
    • 尿検査
    • 便検査
    • 歯や口腔、皮膚、耳、目のチェック
  • 高齢犬・猫の場合はより詳細な検査が推奨されます。

 

American Veterinary Medical Association (AVMA)

  • 健康な犬・猫は年1回の定期健康診断を推奨
  • 高齢ペットは年2回以上が望ましい
  • チェック内容の例:
    • 体重、体温、心拍、呼吸
    • 歯・口腔・皮膚・耳・目のチェック
    • 血液検査、尿検査、便検査
    • 必要に応じて心臓や腫瘍のスクリーニング

※スクリーニングとは、症状のない人や健康な人から、病気の疑いがある人を選別する検査のことで、人ではマンモグラフィーが有名ですね。スクリーニングの段階では、怪しいよねってことがわかり、そこから病理組織生検、つまり出来物を採取して顕微鏡で観察することで、多くの場合は確定診断が出ます

 

これを推奨する理由としては、定期的に健診を受けられる犬猫の方が、そうでない犬猫よりも、長生きする傾向があるという報告もあるからです。

 

なので、年に1回、問診と身体検査と、血液検査、尿検査、便検査を受けられることが、一般的な推奨事項なのかなと思います。

 

 

次に、血液検査の内容についてなのですが、これは大体人と似た内容が推奨されています。偉い先生達が、若い子なら最低限こういった項目、健康な成犬・猫ならこういった項目、高齢犬猫ならこういった項目と、提案されており、多くの先生の支持を受け、検査を専門に取り扱う機関などでも推奨されています。健診パッケージのようなものが存在します。

あとは、それぞれの動物病院の、獣医師の考えでも、内容が変わってきます。

 

 

ここからは私見を多分に踏まえた内容となります。

健康診断で何をするのが一番おすすめですか?と聞かれたら、最近流行りのコストパフォーマンス(コスパ)を考えると、一番は問診と身体検査だと思います。

 

話が飛んでごめんなさい。私の恩師の1人、故H先生が、飼い主さんとの電話にて、こうおっしゃったのを今でも記憶しています。「診察料で1000円(当時)だけお持ち頂ければ、色々とご相談だけでもお受けしておりますので、ぜひいらしてください。」

この言葉を聞いて、正直最初に思ったのは、「先生、消費税計算し忘れてる、後で突っ込まれないかな・・・」だったのですが、まあまあそこは良いとして、後で色々と考えてみて、診察料だけで、問診と身体検査して、専門家から色々とお話受けられるのって確かにお得だなって思いました。

 

腕の良い先生だと、本当にこれだけで、かなりのことを当ててきます。びっくりします。たぶんこれだけでも、相当な価値があると思います。コスパは最強かもしれません。例えば犬猫の3大疾患の心臓病では、聴診がすごく役に立ちます。早期発見の一番のツールだと思います。ワクチンの時などに、一緒にお話を聞いてみても良いかもしれません。(体調が悪い時は、ワクチンはうてません。体調が悪い時は、様子を見すぎず、普通に診察を受けて下さい。)

 

 

次にコスパが良いかなと思うのは、血液検査+尿検査です。犬猫の3大死因は、順序は違いますが、①がん、②心臓病、③腎臓病です。②は心臓の雑音で早期発見できるケースが多いです。③は猫では死因のトップですが、血液検査と尿検査が圧倒的に強いです。昨今では、昔と違い、SDMAやシスタチンCなどと言った、腎臓病の早期発見の項目が出ましたので、早い段階での発見が可能となりました。

 

あとは、レントゲン検査と超音波検査がその次で、余裕のある方は積極的にやられると良いと思います。若いうちに一回、明らかな先天的なトラブルがないかをチェックしておく。歳をとった時の比較対象にもなる。そしてある程度歳をとったら定期的に、検査を受けられるというのが割とスマートなのかなと考えています。

若い子で、問診でも身体検査でも血液検査でも尿検査でもわからないし、本人は全く元気でご家族も全くわからないトラブルを抱えているケースが時々あります。それは実は健康寿命や寿命に大きな影響を与えるトラブルであることもあります。例えば、生まれながらに片方腎臓がないや小さい、肝臓が小さい、股関節の形態がおかしい、横隔膜ヘルニアがあるなどです。なので若い時に一度検査を受けてみて、問題が何もないなら、7歳位、人での40歳位、人でも色々な病気が増えてくるあたりで、定期検診に組み込むのもアリかと思います。

 

健康診断としての便検査は、子犬ちゃん子猫ちゃん、外猫ちゃんの検診ではすごく推奨です。寄生虫がいるケースがありますので。身体検査の次くらいに推奨です。

 

歯科検診も個人的には強く推奨しております。こちらは別のブログを参考頂けば幸いです。あとは特殊なモノとして、中医学での体質診断などもあります。

 

ここで、健康診断の限界にかかわる部分についても書かせていただきます。

そもそも何で色々な種類の検査があるのでしょう?

それは単純に1つの検査ではわからないからです。

話を聞いていると、「血液検査をすれば全てがわかる」みたいに考えていらっしゃる飼い主さん、たぶん一定数いらっしゃいます。

いえ、もちろん全部はわかりません。

血液検査でわかるのは、血液検査でわかることだけです。

残念ながら骨折という重大なトラブルがあっても、血液検査ではわかりません。

骨折に伴い筋肉の損傷や、炎症が起こっている可能性はわかるかもしれません

 

たぶんドラえもんの「お医者鞄」があれば最強なのだと思います。

アレがあれば、すぐにでもお取り寄せしたい位で、1つの検査キットで、全てがわかるという優れものです。治療薬まで出てくるので、お医者さんがいらないかもしれないという凄まじい性能を誇ります。

でも、私も今のところドラえもんには出会えていないので、色々な検査をして、病気がないかをチェックします。それでも各検査には限界があるので、漏れが出てしまうことがあります。

 

健診をすれば、全てがわかるということではないのですが、それでもやはり、様々な病気の早期発見につながり、健康寿命や寿命を伸ばす大きな助けになりますので、とても重要なことだと思います。

 

 

三大疾患のがんの健診についてですが、がんは本当に厄介です。

 

がんマーカーってあるじゃないですか?と時々聞かれますが、確かにあるんですが、私が知りたい情報が得られないことが多いので、現状では特殊な条件じゃないとあまり利用していません。

がんマーカーが陽性ですってなった時に、がんの可能性も十分にありますが、がんじゃない可能性も十分ありますとか、がん体質らしいというのはわかった。けど今がんなのかはわからない。ある可能性も十分にありますとか。

それって、いっそのこと全身的にCT検査などをした方が早いのでは?と、なってしまいます。CT検査ももちろん万能ではなく、ある程度の大きさの出来物が検出される可能性があるという検査です。費用もかかりますし、動物の場合には基本的に全身麻酔が必要です。更にできものがあったから、直ちに「がん」ではなくて、できものを丸ごと摘出するかして、病理組織検査を実施して。初めて確定診断が出ることがほとんどです。それってつまり手術ということになります。本当に手術が必要なのかもわかりません。手術をするべきかの、当たりをつけるためには、場所にもよりますが、針を刺すなどして、できものの細胞を採って調べるという細胞診という追加検査を実施することも多いです。

私としては、そういう大掛かりことをしなくても、採血や採尿で簡単に検査材料が取れて、そのマーカーが陽性なら、100%近く治療をした方が良い悪性のがんがあります。陰性ならほぼ100%悪性腫瘍ではありません。ということがわかって、もしできたら場所や種類まで特定してくれると嬉しいです。

それは、私の知る限りでは今のところ実用化はされていないと思います。

 

そもそもがんについてですが、

犬猫や人の体には何兆個もの細胞があり、健常な犬猫でも毎日たくさんの細胞が死んでおり,細胞分裂によって即座に補充されています。しかし、長い年月の環境変化や発がん性物質などにより、細胞の設計図である遺伝子が傷つくと、細胞の複製ミスにつながり、これが突然変異と呼ばれる現象で細胞が無制限に増殖し、がんが発生すると考えられています。がんは実は若い時から、毎日発生しているのですが、体内の免疫細胞達が除去をしています。

 

この無制限に増殖した細胞つまり「がん細胞」を、簡単に種類分けすると、命を奪ってしまうようなものが、悪性腫瘍と呼ばれ、命には影響がないものを良性腫瘍と呼びます。経験的なものになりますが、犬猫も長生きしていると、がんになることは多いです。良性、良性と来ても、最後には悪性となることも多いです。もちろん悪性だから命を落とすのですが。犬猫が最後に命を落とす悪性腫瘍は、1〜2ヶ月前には、身体検査でも画像診断でもわからなかったものが、急激に大きくなり、1〜2ヶ月後には、末期がんですというパターンが多いです。ゆっくりと進行するパターンももちろんあります。猫ではリンパ腫が多いです。避妊手術をしていない雌猫は乳腺癌が多いです。犬の場合は、脾臓の血管肉腫というがんや、同様にリンパ腫というがんが多いです。発見した時にはすでに食欲がない、元気がない、転移をしているというような末期状態が多く、数ヶ月で命を落とすパターンも多いです。これは悪性度の高いがんです。実は健康診断では、悪性度の高いがんの早期発見はメインの目的にはしていません。健康診断で早期発見を狙っているがんでのメインターゲットは、半年〜2年くらいかけて命を奪う悪性度ややや低めの悪性腫瘍です。肝細胞癌は1つかもしれません。早く見つけて手術をすると治る可能性が十分にあるとされます。

もちろん急激な進行をする悪性腫瘍も、早期発見・早期治療が望ましいです。ただ発生と進行が早いので、毎月のように健康診断をすることが、現実的なことなのか?という疑問が生まれます。なので、急激な進行をする悪性腫瘍の早期発見を一般の健康診断ではメインのターゲットとはしていないのです。特に胸の中や、お腹の中でできるものについてはそうなります。ただ体の表面にできるものに関しては、ご家族の普段からのチェックで早期発見につながる可能性があります。

じゃあ、がん検診が無駄か?というとそうではなく、がんのリスクを上げる生活習慣病の早期発見により、がんのリスクを下げられる可能性が十分にあります。

 

 

動物病院なのでもちろん仕方がないのですが、病気になって病院に来られる方は多いです。もちろん一生懸命対応しています。ただその子達が病気にならないでいられる方法はなかったのか、何か事前にアナウンスできなかったのか、とよく自問しております。なるべく病気にならないように元気で長生きして欲しいと思っております。健康診断は、元気で長生きをしていく、大きなお手伝いになるのではないかと思っております。

最後に、今回は私見を多々ふまえて書かせて頂きました。先生によって色々なお考えがありますので、担当の先生ともよくご相談してみてください。

《循環器》猫の心臓病・心筋症

2026年2月14日

次は猫の心臓病について書いてみようと思います。

ある調査では、猫ちゃんの死因の一位は「腎臓病」で、二位が「がん・腫瘍」、三位が「心臓病」とされているようです。わんちゃんとは、ちょっと順位が違うんですね。それでも心臓病は死因の上位に入ってきます。

ワンちゃん同様に、心臓病と言っても、色々な種類があります。猫ちゃんで一番多く問題になりやすいのは「心筋症」です。猫ちゃんの「心筋症」は突然死を起こしてしまうことのある厄介なトラブルです。

多くの子を治療をさせていただいて、色々と感じることがありますが、まずは一般的な治療ガイドラインであるACVIM分類の要約を載せてみようと思います。

 

猫の心筋症(ACVIMガイドライン)要約

1.心筋症って何?

心筋症とは
👉 心筋症は、「心筋に異常をもたらすレベルの循環器疾患が存在しないにも関わらず、心筋に構造的、機能的異常が起こる病態」と定義されています。

ワンちゃんの、僧帽弁閉鎖不全症を例にあげると、弁が緩むことで、血液の逆流が起こり、心臓のポンプ機能が低下してしまいます。全身に血液がうまく送れなくなるので、体はすごくて、それを何とか解決しようとします。その解決法が心臓の筋肉を分厚くして、もっとたくさんの血液を送れるようにパワーアップさせようとすることです。まあこれが長期的には逆効果だったりするのですが。この現象は確かに心筋が変化を起こしていますが、心筋症ではないのです。こういうパターンではなく、心筋の構造的な異常が起こるのが、心筋症です。とてもわかりにくいですね。

猫では比較的よくある心臓病で、

  • 心不全
  • 血栓塞栓症(後肢麻痺など)
  • 突然死
    につながる可能性があります。

2.猫の心筋症の種類(分類)

心臓の形や動き(表現型)で分類します:

🧬 主な5タイプ

  • HCM(肥大型心筋症):心筋が厚くなる(最も多い)
  • RCM(拘束型):心臓が硬くなり広がらない
  • DCM(拡張型):心臓が拡大して収縮力低下
  • ARVC(不整脈源性右室心筋症)
  • UCM(分類不能型)

👉 猫では原因が不明なことが多く、見た目(心エコー)で分類するのが現実的。 本当は心臓を取って、スライスして顕微鏡で心筋の変化が起こっていることを証明することが、確定診断なのでしょうが・・・、これは現実的ではありません。

3.ステージ(病気の進行度)

ワンちゃんの僧帽弁閉鎖不全症に似ています。

○ステージA

  • 遺伝的リスクだけ(まだ病気なし)

○ステージB(心筋症あり・症状なし)

  • B1:リスク低い
  • B2:心房拡大などでリスク高い

○ステージC

  • 心不全や血栓塞栓症を起こしたことがある

○ステージD

  • 治療しても改善しない末期心不全

👉 左心房が大きいほど心不全や血栓リスクが高い。 ワンちゃんの場合は、ステージB2から内科治療をすると健康寿命と寿命が伸びるという明確なデータがあるが、猫ちゃんでは、わかっていない。色々と効きそうかも?という情報がある。血栓のリスクが高そうなら、治療は強く推奨される。

4.どれくらい多い?

  • 肥大型心筋症(HCM)は 猫の約15%
  • 高齢猫では 最大29%
  • 多くは無症状のまま一生を終える
  • でも約23%は5年以内に心臓関連死
    👉 心不全や血栓、突然死が原因。

5.リスクが高い猫

  • 高齢
  • オス
  • 特定品種
    • メインクーン
    • ラグドール
    • ブリティッシュショートヘア
    • ペルシャ
    • ベンガル
    • スフィンクス
      など。
      👉 遺伝子変異(MyBPC3)も一部品種で確認。

6.症状

多くは無症状。
出ると:

  • 呼吸困難
  • 食欲不振・元気低下
  • 後肢麻痺(血栓塞栓症)
  • 失神
  • 突然死

血栓塞栓症は、「突然ギャっと鳴いたかと思ったら、後ろ足をひきずっている」というのが、よく聞く症状です。緊急疾患ですが、残念ながら多くの子が治療の甲斐なく亡くなってしまいます。飼い主さんが改善して頑張ってケアをしてあげたことで、2〜3年くらい生きてくれた子も中にはいます。

7.診断

🔬 重要な検査

  • 心エコー
  • レントゲン
  • 血圧
  • 甲状腺ホルモン
  • 心臓バイオマーカー(NT-proBNP)
  • 遺伝子検査(特定品種のみ)

👉 心雑音があれば精査推奨。

8.予後(どれくらい生きるか)

  • 無症状なら長生きが多い
  • 心不全や血栓が出ると寿命は短くなる
  • 左心房拡大、重度肥大、不整脈などは悪い予後因子

 

 

ここまでで、お腹がいっぱいになるくらい情報量が多いのですが、猫ちゃんの心筋症の現在の基本的なガイドラインは上記の通りです。ただ猫ちゃんの心臓病、心筋症は複雑怪奇です。とにかく悩ましい・・・。

 

 

<猫ちゃんの心臓病が悩ましい理由>

○早期発見が難しい

・ご家庭内では初期症状がわかりにくすぎる(猫ちゃんは病気を隠す生き物なので、わからないが普通です。)

・初期症状がわかりにくいので、飼い主さんが連れて来ないケースが多い。ワンちゃんは狂犬病の予防接種が義務化されているため、予防接種の際の聴診で見つかるケースが多いけど、猫ちゃんはワクチンや健康診断が推奨はされているが、義務ではないため、定期検診を受けられない飼い主さんが結構いる。(正直頑張って連れて来て欲しいです)

・急激に悪化して、突然死することもある

・わかりやすい症状が出た時は末期もしくは末期に近い

 

→初めましての方で重症ですや、久しぶりに来られたら重症ですとか、もう亡くなっていますって言うのは、私達獣医師もすごくショックです。何とかしてあげられなかったかなと、無力感を感じます。亡くなっている子は仕方がないのですが、重症な子はもちろんよく相談をして、その子とご家族にとって最善の方法なないかを一緒に探しながら、頑張って治療をしますが、早く見つけてあげられていたらなと、内心思っている自分もいます。飼い主さんを責めているわけではなく、何かできなかったかなと思うわけです。なので、今回ブログを書いてみました。

 

○診断が難しい

・心臓の雑音や不整脈があれば、早期発見につながるが、猫ちゃんは心雑音が非常にわかりにくい。

猫ちゃんの心臓の雑音は聴取が難しく、ゴロゴロのどを鳴らす子は・・・可愛いのですが、まず雑音はわかりません。心臓の雑音がワンちゃんよりも小さく、ほんのちょっとでも聴診ポイントをずらすと聴こえなくなります。不整脈は常に起こっているとは限らず、たまたまタイミングが合って聴こえるケースもあります。肥満症の子は脂肪が邪魔をして、これまたわかりにくい。

・心臓に雑音がない場合もある

血液検査やレントゲン検査、超音波検査、術前の心電図検査をしても、何も異常がないけど、麻酔をかけたタイミングで、急に不整脈が出始めるケースもある。滅多にないですが、ここまでくると流石に事前の発見は困難です。

→私も頑張って見逃しがないようにしていますし、結構見つけてあげられていると思いますが、獣医師も一回ではわからない時もあると思うので、猫ちゃんを連れて行くのは大変かとは思うのですが、定期的に検診を受けさせてあげて欲しいです。

 

○治療が難しい

・同じ心筋症でも、個体差がかなりある

・心筋症は心臓を作っている筋肉が変性(構造が変化)してしまう病気です。肥大型心筋症、拘束型心筋症、拡張型心筋症などの、型で分類はされているのですが、心筋が分厚くなってしまう肥大型心筋症でも、心筋の一部だけが分厚くなる時もあります。場所が良ければ心臓のポンプ機能(心機能)には問題ないこともあるし、場所が悪ければ重度な心不全を起こしてしまうこともあります。心不全と一概に言っても、心臓の中でダメージを受けている場所が違うと、同じ心臓の薬でも逆効果になってしまうことがあります。構造や機能的に何が起こっていそうかを調べて、理論的にそして過去のデータ的にこの薬が効くだろうとスタートしてみて、もちろんその通り効くことは多いのですが、逆効果になるケースもゼロではないです。手探りで効果のある薬を検証していくケースもあります。

代表的なものとしては、アメリカンショートヘアやロシアンブルーの肥大型心筋症などで、起こりやすいSAM(収縮期前方運動:左心室内で弁が異常に動く現象)と呼ばれる現象です。この現象が起こっているケースだと、アテノロールと呼ばれる心拍数を減らす薬で、このSAMという現象を改善させ、場合によっては、心臓の雑音が消え、血液検査にて心臓の負担を示すマーカーが減少するということを経験したことがあります。

 

・上記の通りですが、ワンちゃんの僧帽弁閉鎖不全症と同様に、ACVIM分類があります。ワンちゃんの場合、症状はないけれども、心不全が起こっていると言うステージB2では、ピモベンダンという内服薬をスタートすると、病状の悪化を明確に予防できるというデータが出ています。しかし、猫ちゃんの場合は、血栓症のリスクがあるなら、その予防は積極的にやった方が良いとはあるのですが、何をやればワンちゃんのように、病気の進行を遅らせることができるのかが、明確にはされていません。これは多分、同じ心筋症と言っても、心筋の変性が起こる場所や、タイプが色々とあるため、複雑だからだと思います。今後少しずつ、細かいパターン分類を実施していき、このパターンではこの治療法が効果的というデータが増えていけば、早期治療の明確なメリットが出てくるのではないかなと期待しています。あとは、今の薬や治療法は、タウリン欠乏症や甲状腺機能亢進症などの病気に伴うものを除き、基本的に心筋の変性自体を直接抑えるタイプの薬ではなく、イメージとして心臓の動きをなめらかにすることで、心臓へのダメージを減らして、2次的に心筋の変性を遅らせる効果も狙っているのかなと思います。そもそも心筋の変性が問題なので、それを抑制することが全ての心筋症の治療法になるのかもしれませんね。最近では食事療法が心臓のダメージのマーカーを下げ、厚くなった心筋を薄くさせる効果があったという情報も出てきています。もしかしたら、将来的には、心筋の変性自体を根本的に治してくれる治療法が出てくるのかもしれませんね。

 

 

最後に、猫ちゃんの心筋症の治療については、ワンちゃんの僧帽弁閉鎖不全症のように、早期発見後の治療の予防効果が明確ではないです。また根本治療として手術と言う方法もあるので、ワンちゃんの僧帽弁閉鎖不全症の治療は、猫ちゃんの心筋症の治療より先を進んでいると思います。個人的には、猫ちゃんでも、悪化を抑制する効果的な方法が確立され、場合によっては、治せる病気になって欲しいなと願っています。

猫伝染性腹膜炎という病気をご存知でしょうか?ほんの10年前までは致死率はほぼ100%の不治の病でした、ですが新薬の登場により、8割以上の子が治る時代が到来しました。ワンちゃんの心臓外科も成功例がこんなに出たのは、20年も経っていないです。

10年前は不治の病だった疾患が、今は治る時代です。
猫の心臓病も、きっと同じ未来に向かっていると信じています。

《循環器》犬の心臓病・僧帽弁閉鎖不全症

2026年2月13日

今回は犬の心臓病について書いてみようと思います。ある調査では、ワンちゃんの死因の一位は「がん・腫瘍」で、二位が「心臓病」、三位が「腎臓病」とされているようです。このように心臓病はワンちゃんの寿命に大きな影響を与える病気です。

 

心臓病と言っても、色々な種類があります。ワンちゃんで一番多く問題になりやすいのは「僧帽弁閉鎖不全症」です。

心臓は血液を全身に送るメインのポンプです。血液は全身の細胞が活動するために必要な酸素や栄養等を届け、代謝(細胞達の活動)によって生まれた老廃物を処理する臓器に送る等の大切な働きがあります。心臓は動物種によって形が違うのですが、人犬猫は4つの部屋に分かれています。全身から戻ってきた血液は「大静脈」→「右心房」→「右心室」→「肺」→「左心房」→「左心室」→「大動脈」を通って、また全身に送られます。このポンプが上手に動くために、それぞれの部屋に逆流防止弁がついているのですが、「左心房」と「左心室」にある逆流防止弁の1つを「僧帽弁」と昔の偉い人が名付けました。この僧帽弁が漏れてしまう現象のことを「僧帽弁閉鎖不全症・逆流症」と呼びます。

他にも右心房と右心室の間の「三尖弁」が漏れていれば、「三尖弁逆流症」、逆流以外にも弁が狭窄する(狭くなる)ケースもあって「肺動脈弁狭窄症」、心臓の一部に穴が空いてしまっているケースもあり、例えば左心室と右心室の間だと、「心室中隔欠損症」と呼ばれます。

これらって全て心臓病ではあるのですが、起こる現象が違うので、症状も違うし、治療法も違ってきます。

 

こういう話を出したのは、診察での心臓病の発見の流れの中で、私達獣医師はワンちゃんの心臓の音を聴いて心臓病を発見することが多いからです。

「あれ?心臓に雑音がありますね。」、「不整脈があります。」

こういう異常所見を発見することで、心臓病がありそうだという手がかりを得るのですが、心雑音や不整脈は、心臓病の可能性があるというだけで、実際に心臓で何が起こっているのか、どれくらい悪いのかまではわからないのです。もちろん問診やその他の身体検査上の異常所見で、ある程度の重症度などは予測できることは多いのですが。なので、こういった異常があった時には、追加で血液検査、レントゲン検査、超音波検査、血圧検査、心電図検査などを駆使して、具体的に心臓で何が起こっていて、どのようなケアをした方が良いのかを検討していくことが、望ましいです。

↑AIにイラストを作ってもらったんですが、聴診している場所が違うなと気になるのは職業病かもしれません。どこの聴診部位で雑音が大きく聴こえるか、どんな種類の音か等で、心臓病の種類をある程度予測することもできます。職人芸みたいなもので、神様みたいな人もいるんですが、最終的にはやはり誰が見てもわかるように、データとして比較できるように、いくつかの客観性の高い検査法も利用した方が良いかもしれません。

 

ここで、ちょっとした疑問があるかもしれません。それは獣医師によって、検査内容がことなることがあると言う点です。これは、色々と理由はあるのですが、確かに全部を診た方が良いかもしれませんが、費用がかかるや、動物がすごく攻撃的であり検査が難しい、動物の状況から緊急性が低そうなので、ポイントを押さえて最低限の検査にしている、逆に動物の状況が悪いので、状態を見ながら少しずつ検査を実施している。獣医師によって得意な検査や、治療での勘所・指標となるポイントが違うなど、獣医師や動物自身、飼い主さんの色々な事情があるからです。ちょっとした裏話もすると、超音波の検査は心臓病の確定診断やモニタリングのために、とても有用な検査です。ただ客観性もあるけど、主観性も結構強い検査なのです。実は流派のようなものが存在して、検査をする獣医師によって、測定方法が若干違うことがあります。なので勘所や指標となるポイントが違ってくる原因の1つになっているのかなとも思われます。一般医としては、決めて欲しいなと思ったこともあるんですが、今はそれはそれでメリットもあるかなとも思っています。

 

心臓病には色々な種類があって、治療法が違うと言えば、その通りなのですが、今回は特に、ワンちゃんで一番多い「僧帽弁閉鎖不全症」を例に挙げて、どんなことが起こって、どんな治療を検討していくのかを書いてみようと思います。

<原因>同じ僧帽弁閉鎖不全症でも原因によって治療が異なるケースがあります。特に心内膜炎などの感染症は、感染の治療が重要です。

・弁の変性(粘液腫様変性):一番多く、ガイドラインで語られるのはこれが原因の場合です。

・心筋症:大型犬やコッカースパニエルに多いです。

・心内膜炎:弁の変性もですが、この心内膜炎も歯周病が原因のことがあります。

・腱索断裂:チワワでの経験が多いです。急激に悪化することも。昨日まで元気で雑音も何も無かったけど、急性心不全に伴う肺水腫で急死することもあります。

<リスク因子>

・老化・加齢:10歳を超えると1割以上の子が罹患します。老化とともに増えます。

・歯周病:歯周病菌がゆるんだ腱索から検出されたと言うデータがあります。

・肥満:人と一緒で肥満症は現在病気と認定されており、万病の元となります。逆に痩せすぎも健康には良くないです。

・犬種:キャバリア、チワワ、マルチーズ、シーズー

・高血圧症:ワンちゃんでは心臓病自体によるものが多い印象ですが、腎臓病やクッシング症候群などに伴うものも多いです。

 

<症状(兆候)>

・咳 ・運動を嫌がる ・バテやすい ・興奮すると舌が紫色になる(チアノーゼ) ・呼吸困難 ・食欲不振 ・失神 など

 

初期は、症状は認められません。運動を嫌がる・疲れやすい等に気付く方もいらっしゃるかも。定期的に動物病院で聴診をしてもらっていると、早期発見ができるかもしれません。あまり病院にかかってない方で気付くのは、咳が出始めてからか、呼吸が苦しそうになってからが多いです。呼吸が苦しそうな場合は、「肺水腫」という肺に水が溜まった状態で、窒息死しかけている状況の可能性がありますので、日中ならすぐにかかりつけ医に、夜間なら夜間救急受診が望ましいです。溺れているのと同じような状況なので、溺れかけているのに半日でも様子を見てしまっては手遅れになる可能性があります。

 

<ACVIM分類:病気のステージと治療ガイドライン>

昔からいくつかの分類がされてきました。昨今は粘液腫様変性に伴う、僧帽弁閉鎖不全症での病気のステージ分類と治療ガイドラインが作られています。ACVIMはアメリカ獣医内科学会の略称で、世界的な動物医療のガイドラインを作成していく機関です。

 

・ステージA:心疾患を発症するリスクが高く、現時点では心臓の構造的異常は起きていない犬。心雑音のないキャバリアやチワワなど。

・ステージB1:

心雑音はあるが、レントゲンやエコー検査で心拡大(左心房・左心室)が認められない状態。

 

・ステージB2

目にみえる兆候はないが、心雑音があり、レントゲンやエコー検査で心拡大が顕著に認められる状態。

この段階で心臓薬をスタートすると、平均で15ヶ月以上、心不全の発症を遅らせられるというデータが出ています。

・ステージC

現在あるいは過去に心不全徴候の認められた犬。 肺水腫を起こしたことがある。

肺水腫を起こした場合の平均余命は、治療した場合も含めて6〜8ヶ月程度とされています。治療をしないと発症した当日に亡くなるケースもあります。

・ステージD

心不全徴候が標準治療に抵抗性を示す終末ステージ。

 

大まかにこのように分類されています。ステージB2では、心臓の雑音の大きさのレベルが一定以上で、超音波検査やレントゲン検査で心臓が大きくなっている所見をいくつか満たしたら、診断されます。ACVIM分類ではこの検査項目を使いましょうという、決まりがあります、レントゲン検査や超音波検査が必要となりますが、獣医師によっては超音波検査だけ、レントゲン検査だけ、血液検査だけ、あるいはそれらを組み合わせる等、やられています。個人的には最初は全部やってもらった方が詳しく戦略が練りやすいので、全部受けていただくことが多いです。そこまで重症じゃないかな?っていう時には、血液検査を先にやって心臓の数値が高い場合のみ、追加検査に進むというケースもあります。

 

治療は、基本的には投薬療法・内科治療となり、早期発見早期治療、ステージB2からスタートすると、健康寿命と寿命が長くなると言うデータが出ています。ステージが進行すると、肺水腫という呼吸困難を起こすトラブルのリスクが上がります。獣医師によって違うかもしれませんが、内科治療の目標は、健康寿命と寿命を延ばすことと、肺水腫という苦しい状態を予防することとなります。昨今は根本治療として外科治療という方法もあります。当院では近くに手術ができる施設があるので、今まで10頭程度手術を受けられていらっしゃいます。手術を受けられて、寿命と健康寿命が明らかに伸びている、内科治療が必要なくなった子も多いです。ただ高度医療となりますので、一般的とは言えないです。

生き物は人間も含めて命は有限で必ず何かしらの病気になります。1年に1回も動物病院に検診に行かない、体調が悪そうなのに、動物病院を受診させないのは飼い主として、流石にいけないとは思います。病気だと言われたら怖いとか、ご家族がどうしても余裕がない等、色々な事情があるので、仕方がないこともあるかもしれませんが、もしこの記事を読んでみて、身内でそういえばと思うことがあれば、勇気を出して、近所の病院に連れて行ってあげて欲しいなと思います。

動物病院を受診し、獣医師と相談をした上で、どのように付き合っていくかを選択するというのは間違っていることではありません。すべての動物・ご家族にとって、高度医療を受けることが、幸せであり、正しいことであるとは限りません。いくつかある選択肢の中で、動物のために、何をして上げられるのか、一生懸命愛情を持って考えてやることが大切なことかと思います。獣医師として厳しいことを言う時もあるのですが、色々としんどいだろうなぁ、言ったらどう思うかぁ、でも獣医師として言わないとなぁと、内心葛藤することも多々あります。

 

内科治療でも、獣医師によって使う薬が違うことがあります。これは専門医であってもそういう現象が起きます。ガイドラインでも色々な過去の論文を見て、専門医達がどういったレベルで推奨しているか、ということが書かれており、これじゃないといけないという風には書かれていません。薬もその子その子で合う・合わないがありますし、獣医師によって、得意な武器(薬)が違って、この状況だったら、この薬が合うというような、職人の感覚のようなものがあるケースもあります。わからない時は、担当の先生によく相談されると良いかと思います。

 

私個人は基本的にはガイドラインに則った治療をメインで推奨しているのですが、仕方がない部分もあるのですが、できるだけ病気になって欲しくないので、プラスアルファで、何も症状が出ていない子は、予防として、リスク因子である肥満症の予防・治療、歯周病の予防・治療を推奨しています。また余裕のある方は血液検査を受けられることも推奨しており、腎臓病やクッシング症候群などが怪しくないかなどのチェックをおすすめしています。心臓病を発症している場合には、ご希望や状況に応じて、ガイドライン外の手術の案内や、漢方や食事療法などもご提案しております。

寿命と健康寿命に関わってくるトラブルなので、予防もそうですし、早期発見・早期治療のため、半年に1回程度、ワクチンの時にでも一緒に聴診を受けてもらうこともおすすめしています(ワクチンに来られたら、基本的には聴診をします)。

 

実際の治療ですが、内科治療を実施していくケースは多いですが、老化現状に近いので、基本的には病状が進行していきます(時々全然変わらない子もいます。まれに重症化した子で治ることもあります。この辺りはすごく嬉しいパターンです)。それを遅らせるのが目標なのですが、初期は強心剤(ピモベンダン)をおすすめするケースが多いです。病状が進んで行った場合は、心臓の負担を他の臓器に肩代わりしてもらうような薬を使用していくことが多いです。つまり利尿剤です。利尿剤を使うことで、心臓への負担を減らし、咳で苦しむ、肺水腫で呼吸困難となるリスクを減らしていきます。ただ使い過ぎると、心臓以外の特に腎臓に負担がかかり、これも寿命に影響が出てしまいます。腎臓が悪くなると元気や食欲が無くなってしまいます。これも良くないのですが、バランスを見ながら、必要に応じて色々な薬を使って、老衰に近い(老衰に見える)形で、ゴールまで伴走していきます。上手くいくなら、心臓病では亡くならないようにするのが、心臓病治療としては最善ですが、歳でどうしても他の病気にはなってしまいますので、トータルのバランスを見て、相談しながら治療を行っています。老衰だね。大往生だね。って言えるようにしてあげたいなと、個人的には思っています。

同じ心臓病の治療と言っても、獣医師によって目標設定が違うケースがあります。一般の総合診療医でも違いますし、専門医でも違います。専門医の先生の中には、とにかく心臓病では死なせないということを目標にされているのではないかな?と思われる先生もいらっしゃいますし、ご家庭や動物の状況、他の病気の有無でバランスを見て、考えられる先生もいらっしゃいます。どっちが悪いってことではないです。何が正解か?と言うのは、ご家族の方針によるのかなと思います。よく担当してくださっている先生と相談してみてください。

《予防・歯科》犬猫の歯のお悩み、質問形式で 〜歯周病って?歯のケアって?歯石取り?〜

2025年4月14日

歯のお悩みでたくさんの患者さんがご来院されるので、今回はよくある質問について、書いてみようと思います

 

Q1:歯のケアって何故重要なの?

A1:ある論文にて歯のケア(スケーリング)を定期的にしている犬では、していない犬よりも寿命が長いというデータが出ています。また心臓病のある犬とない犬では、心臓病の犬の方が血中の歯周病菌が多い、つまり心臓病と歯周病は関係しているのではないかと考えられています。心臓だけでなく、肝臓や腎臓への負担もよく言われています。歯周病で歯が痛い、顎の骨が溶けて折れてしまう、歯の根っこから膿が多量に出てしまう等、様々な怖いことが起こるため、歯のケアが重要だとされています。ちなみに、2歳までに80%の犬が歯周病であったというデータもあります。当院にかかっている患者さんでは、デンタルケアを頑張られている方が増えていますので、もう少し低いようには感じます。歯周病関連のトラブルはとても多いので、重要だと考えております。

 

Q2:歯のケア、歯磨きはどれくらいの頻度で行った方が良いでしょうか?

A2:あまり難しく考えないでください。ご自身の歯磨きと一緒です。できたら毎食後が望ましいです。歯の表も裏も間も歯周ポケットも1本1本丁寧に磨くのが望ましいです。ただこれが中々大変だし、難しいんです。歯磨き大好きというワンちゃんは少ないです。毎日やるっていうのは正直大変です。毎日が難しければ、2日に1回でも、今日は前歯だけ、明日は奥歯だけでも良いんです。やらないより良いんです。できるところから少しずつやってみてください。ただし噛まれる時は無理はしてはいけません。

Q2:補足

歯磨きのタイミングは食後が望ましいのですが、敢えて食前にやるのも1つの手だと感じています。皆さんのおうちのワンちゃんは歯磨きが好きでしょうか?好きな子は珍しいのではないでしょうか?

逆に飼い主の皆さんは、またはお子さんは歯磨きが好きでやっているという方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?たぶん好きでやっているわけではなく、虫歯になってツラい思いをするから、ある意味仕方がなく、やっているのではないでしょうか?習慣的にやっているとやらないと気持ちが悪いと思う方もいらっしゃいますかね?

ワンちゃんには、歯磨きをしないと病気になるとはたぶん理解できません。口の中に何かを突っ込まれて掻き回されて、下手したらすでに歯周病があったら、そこをイジられたら痛くてツラいかもしれません。多くの子は嫌なんです。だけど健康のためにはしなければならない。そこでどうするか?

それがあえて「食前にやる」という方法です。食事が大好きな子は、食事の前に「待て」や「お手」などの芸をやってと言うと、一生懸命やってくれる子は多くないでしょうか?つまりご褒美のために頑張っているんですね。「待て」や「お手」の代わりに「歯磨き」をすると、ご褒美のために頑張ってくれる子がいます。こういう方法を使うのも1つかもしれません。

ワンちゃんは虫歯が少ない代わりに歯周病が圧倒的に多いです。食べカス=歯垢は、2〜5日程度で石のような歯石に変化します。食べカスは、歯と歯肉の間に溜まることが多いのですが、ここに歯周病菌が棲みつき、歯の周りの組織・骨を溶かしていくという怖い病気です。歯周病菌の棲家となる食べカスは、歯垢のうちは歯磨きで取り除くことができますが、歯石になると歯医者さんで使うような機器類でないと取り除くことができません。食べカスがついたら、早めに取り除くのが望ましいですが、本格的に取り除けなくなる歯石となるまでは、数日かかりますので、その前に取ってしまえば歯周病のリスクは低くなります。

歯周病で口の中が痛い子は、まずは治療をしてから歯磨きをするのが望ましいです。

 

 

Q3:歯磨き粉は使った方が良いですか?

A3:歯磨き粉のメーカーさんからは、使った方が効果的だというデータを出されていらっしゃるので、効果的なのではないかと思っています。しかしまずはブラッシングの仕方が大切です。歯の間にゴハンが挟まっているのを取らずに、そこに一生懸命歯磨き粉を塗っても、効果が十分に発揮されません(歯磨き粉によっては、塗るだけで炎症を抑える作用や、菌の発育抑制作用があるものもあります。ただ根本の歯垢や食べかすを取ることがまず大切です)。やはりブラッシングの仕方が大前提です。あと人用はキシリトールが入っているので使用しないでください。ワンちゃんにキシリトールは毒性があります。

 

Q4:デンタルシートでも良いですか?

A4:大前提として歯ブラシでのブラッシングが一番だと思います。飼い主さんご自身でデンタルシートを試したと考えて頂き、歯のザラザラ感はどうでしょう?歯の間は如何でしょう?きっと歯ブラシの方が良いと思われる方は多いのではないでしょうか?そして何よりもワンちゃんで多い歯周病は歯周ポケットに汚れが溜まって起こる病気です。この歯周ポケットはブラシじゃないと綺麗にできないんです。だからこそ歯ブラシが一番となります。でもそうです。歯ブラシをやらせてくれないんです。そういう時にブラッシングをやる前の練習として、デンタルシートを使うと良いと思います。

 

Q5:歯磨きガムでも良いですか?

A5:歯磨きガムも効果があるのですが、ブラシやシートで拭くよりも効果が落ちる傾向にありますので、補助として利用されると良いと思います。想像してみてください。もし飼い主さんご自身が歯磨きガムだけで自分の歯をキレイにキープできそうか?できる方もいるかもしれませんが、中々難しいのではないかと私は思います。ちなみに一般的な歯磨きガムは、ガムをかんだ時の摩擦で歯垢が取れます。飼い主さんがやりがちなミスのNo. 1は、ポイッとそのまま与えることです。よく観察してください。一体何回ガムをかんだでしょう?数えてみてください。大して噛みもせずに飲み込んでいる子が多くないでしょうか?与えるなら逆側を持って、簡単には飲み込ませないようにして、前歯、奥歯、左右何度も噛ませてください(※噛まれないよう注意してください)。あと与える量も注意です。推奨量が袋に書いてあるかもしれませんが、意外と書いてある推奨量でも量が多いケースが多いです。要は太りますので、その子その子で量の調整が必要です。ヒントとしては自分が食べる量で考えてみてください。ベスト体重が3kgの男の子の成犬にガムを1本与えるとはどういうことか?私達換算言うと成人男性、170cm、60kgだとしたら、ガム20本です。そりゃ言い過ぎだよと言うなら、半分にしましょうか?ガム10本です。毎日ガム10本をご自身が食べたらどうなるか?意外とカロリーが高そうに思えませんか?歳とともに基礎代謝が低下してきている私にとって、いつものゴハンにプラスして毎日ガム10本食べなさいと言われると、1ヶ月後の体重は大変なことになっていそうです。わんちゃんは太れば太る程、平均寿命が短くなるというデータが出ていますので、良かれと思ってやったことが悲しいことになるかもしれません。歯磨きガムは与え方が大切です。

 

Q6:歯磨きのおもちゃはどうでしょう?

A6:普段から何かを齧っている子は、そうでない子に比べるとデータでも経験的にも歯がキレイな傾向にあります。齧ることの摩擦で歯垢が取れるのでしょう。齧ることは歯に良さそうです。ただここにも注意点があります。①硬すぎる物は与えない。ひづめ等ある程度の硬さがあるものは歯が折れることがあります。特に奥歯の大きな歯が折れることが多いです。歯が磨耗してほとんどなくなっている子もいます。また②食べてしまわないように注意(誤食)。本来は食べてはいけない物を丸呑みしてしまい、腸に詰まってしまうケースもあります。好みもあるので、具体的に何を与えると良いというのは、すみませんが難しいです。硬さや安全性で言うなら、やはりガムが無難ではあるかもしれません。

 

Q7:歯ブラシってどんなものが良いの?

A7:これも結構難しいんです。わんちゃんの口の大きさってかなり幅がありますので、まずはお口のサイズにあったブラシを選ぶ必要があります。そして毛先が硬いものはあまりすすめていません。実は歯磨きが痛くて歯磨きが嫌だというケースも結構あるんです。それは毛先が硬くて痛いということも要因の1つなります。あとはすでに歯周病があり、デリケートな状態なのに更に毛先が硬いもので磨くと、やはり痛いんです。痛くないけどしっかりと取れる毛先が望ましいです。今のところ特に小型犬にはヘッドが小さくて毛先が硬過ぎない動物用の歯ブラシをすすめています。

 

Q8:歯の治療で歯を抜くんですか?

A8:歯周病が進行すると抜歯をする必要が出てきます。歯の根っこの部分にバイ菌の塊がついて、歯の周りの骨が溶けてしまっており、その歯が残っていることで本人がツラい思いをして、可哀想なので抜くことがあります。むしろすでにグラグラで接着剤のようになっている歯石を取るとポロリと抜けてしまうことも多いです。歯を抜くのは可哀想ですし個人的には歯を抜きたくないので、抜かなくて良いように歯磨きをして欲しいです。そして汚れてきたら歯がダメになる前にクリーニングをしてあげると良いです。獣医としては、全部の歯をキレイにすべきと言わないといけないのかもしれませんが、長生きすると、私達人間でもどうしても1本か2本、歯がダメになることがあるかと思います。できる範囲で良いので健康な歯をキープしてあげて、健康で元気に長生きしてもらいたいと思っています。

  

↑ 左は正常な歯のレントゲン、右は歯周病の歯のレントゲンです。右側の青丸の歯の周りが左に比べて黒くなっていることがわかります。これは歯を支える顎の骨が歯周病菌により溶かされていることを示唆しています。

↑ 上記のレントゲンに写っている歯周病におかされてしまった歯です。歯の表面(下の部分)は白いですが、歯の根本(上の部分)は茶色い歯石や歯垢が付着しています。イメージとしては歯の根っこが腐っています。腐ったものが口の中でずーと刺さっていて、どんどん顎の骨が溶かされていたら嫌じゃないでしょうか?残しておいたらワンちゃんにとって害にしかならないので、抜去しています。

 

Q9:歯の治療に麻酔は必要ですか?

A9:当院では歯の治療を行う際には、基本的に全身麻酔を実施しています。麻酔をかけないとキチンとした治療ができないし、危険だし、動物が可哀想だからです(次のブログを見ていただければわかると思います)。飼い主さんのほとんどの方が歯医者さんに受診されたことがあるのではないかと思います。私達も歯医者さんと同じようなことをやります。歯を1本1本、表も裏も間もチェックして、歯周ポケットは深くなっていないか、汚れが溜まっていたら、歯の表も裏も間も歯周ポケットの中もキレイに掃除をします。歯周病は歯周ポケットの中に汚れが溜まりどんどん広がって骨を溶かしていく病気です。軽度の歯周病の治療の際には、この歯周ポケットの中の汚れを取ることで治療が可能なのですが、「アーンしてね」や「動かないでね」と言っても動物には中々できないので、麻酔をかけずに歯周ポケット内の汚れを取るのは非常に難易度が高いです(麻酔をかけないでも、大人しい子でしたら表面の歯石は取れるかもしれませんが、しっかりとした治療ができたか?と聞かれると私には難しそうです)。そもそも歯周病があって痛いわけなので、無理やり押さえつけてやるのは、きっとツラいことなのではないでしょうか?更に歯がもっと悪くて抜歯が必要ですとなったら、麻酔をかけないで抜歯をするのは、よほどグラグラしていてポロリと抜けるような状況でなければ、きっととても痛いでしょう。一方でもちろん麻酔をかけるリスクもありますので、メリット・デメリットを天秤にかけて治療をご提案しています。話は戻りますが、できたらなるべく歯磨きをしてください。

 

Q10:歯石取りはどれくらいの頻度でやった方が良いですか?いつからやった方が良いですか?

A10:まず歯石取りという言葉やイメージが先行していて、何だかわからなくなっているのではないかと思われます。そして具体的にいつというのは、「その子とご家族次第」がお答えになります。

それでもどうしたら良い?というご質問に対しましては、個人的には今のところ最低2〜3年以内に1回くらいのペースで、お口のチェックを受けられてはどうか?とアナウンスをしています。

 

理想的には歯磨きがしっかりとできていて、歯垢も歯石の付着がなく歯周病になっていない、そしてその他、歯が折れる等といった口腔内の病気が無いなら、歯石取り、歯内治療、抜歯等の治療は必要ありません。

ただ一生懸命歯磨きをしていても、私達自分自身の歯であっても、歯科医に診てもらうと歯石がついている、中には虫歯や歯周病を指摘されることがあります。そのため人では、半年毎の歯科検診がすすめられています。早期発見早期治療でなるべく健康な歯を残していくことは、人でもとても重要だと考えられているからです。寿命と健康寿命が伸び、認知症の予防にもなるとされています。

わんちゃんの場合も、予防歯科の考え方は同じで、結果的には歯石も取るのですが、定期的に歯科検診をし、なるべく健康な歯が残るようにしていきましょうということになります。歯科検診の頻度は、先生によってご意見も変わりますが、ある専門の先生は半年に1回、少なくとも1年に1回はやった方が良いでしょうとおっしゃっています。ただ人と違うのが、ワンちゃんの場合はしっかりといた歯のチェックをするためには、やはり全身麻酔が必要になるということです。

私個人は、飼い主さんの予防意識や、実際にどの程度のデイリーケアができるか、麻酔をかけられそうか、口の中のトラブルの重症度等を加味して、対応させて頂いております。

具体的には、定期的な歯科検診を受けられている方、見た目だけではきっちりと評価はできないのですが、歯槽骨が溶け始めていそうな所見が出る前(抜歯が必要になる前)に定期的に治療を受けられる方。すでに歯周病があるがこれから予防歯科を頑張りたいという方、日頃のケアはできないのだけど歯周病で歯が痛くてご飯が食べられない、根尖部膿瘍で頬から膿が出続けている等、本人の苦痛がヒドイ場合のみ治療をするという方など、様々なパターンがあります。

 

Q11:歯磨きのやり方がわからない

A11:言葉では言い表すのが難しいので、いつも紹介させていただいているドッグトレーナーの先生の無料動画を見て頂くことをまずオススメします。

ハッピードッグライフエマ

↑当院HPの一番下にあるこちらのリンクから飛んでみてください。ワンちゃんの飼い主さん必見のしつけ動画をたくさん載せてくださっています。

それでも難しそうなら、かかりつけの先生やトレーナーさんと相談してみると良いと思います。

「ウチの子は歯磨きを嫌がるんです」と言われる方がおられますが、大丈夫です。私が知る限り歯磨きが好きという子はとても少ないです。うまくトレーニングを重ねていくことで、「好きではないけど我慢できる」、「歯磨き事態はそれ程好きではないけど、褒めてもらえるから、ご褒美がもらえるから好き」までできるかもしれません。私達人間も歯磨きが大好きでやっているというより、歯磨きをしないといけないからやっているのではないでしょうか?

 

動物の歯科もドンドン発展しており、様々なご意見やお考えがあるかと思います。もしかしたらもっと良い回答があるかもしれません。こちらで書かせて頂いたことが完璧で正しいとは限らないのですが、1つのヒントとなれば幸いです。お口のことが気になるなと思われたら、まずはかかりつけの先生とご相談してみてください。

腎臓病③

2025年3月28日

慢性腎臓病の治療の続きですが、今回はもうちょっと具体的な治療内容について書かせて頂きます。

慢性腎臓病の治療にはガイドラインが存在します。IRISという団体さんが出されているガイドラインです。大体下記のような内容となります。

私個人は、このガイドラインをベースに考えて、その子毎にご家庭毎に相談しながら、治療内容をアレンジしております。ガイドラインに載っていない医薬品、サプリメント、漢方薬なども、ご相談の上で処方させて頂いていることもあります。

 

ステージ 残存腎機能 血清クレアチニン(mg/dL) SDMA (µg/dL) 平均余命 主な治療目標 推奨される治療・管理
ステージ1(初期) 約100%〜33% 犬:<1.4、猫:<1.6 >14 犬:約400日以上 早期発見・進行抑制 ①腎臓に負担のかかる持病の治療・予防(尿路結石の予防や、尿路感染、高血圧のコントロール)

②腎臓に負担がかかる薬や、食べ物(高タンパク食)をなるべく控える

③定期的な健康診断(SDMA・クレアチニン・尿タンパク、血圧などのモニタリング、画像検査)

④水をよく飲めるようにする

⑤トイレを我慢しないようにする

ステージ2(軽度) 約33%〜25% 犬:1.4–2.0、猫:1.6–2.8 18–25 犬:約14.78ヶ月 進行抑制 ステージ1に加えて

① 療法食(低リン・低タンパク食)

※ステージ1は高タンパク食を控えるでした、低タンパク食を推奨

② リン吸着剤の使用

ステージ3(中等度) 約25%〜10% 犬:2.1–5.0、猫:2.9–5.0 26–38 犬:約11.14ヶ月 進行抑制・症状緩和・生活の質向上 臨床症状が出るので、ステージ2までの治療に加え、症状を緩和する治療が追加される

① 貧血対策(エリスロポエチン投与)

② 電解質異常(カリウム補充など)管理

③ 皮下輸液(脱水治療・防止)

④制吐剤・胃酸抑制剤(吐き気の緩和のため)

⑤食欲増進剤

など

ステージ4(末期) 約10%以下 犬・猫:>5.0 >38 犬:約1.98ヶ月

猫:約3ヶ月(中央値103日)、

症状の緩和・生活の質の向上>進行抑制 ステージ3までの治療に加え、栄養と水分投与と投薬のサポートのために、栄養チューブを検討

 

・上記で書かれている平均寿命は、文献や臨床データからのもので、同じ慢性腎臓病でも、その子その子の体質や状態、慢性腎臓病の原因、ケア法によって大きく変動します。

・前回も書かせて頂いた通りなのですが、このガイドライン通りに全てを実施することが、正しいというわけではなく(ガイドラインも時々アップデートがあります)、動物とそのご家族の数だけの正解があると思います。ご家族とかかりつけの獣医師ともよくご相談しながら、治療を受けられることをオススメいたします。

 

・慢性腎臓病は、寿命や生活の質に影響する病気で、基本的には治らない病気であり、進行性の病気です。

・早期発見・早期治療で寿命が伸びるという様々なデータが出ております。ステージ2までは基本的には症状がわかりにくい、もしくは症状が出ません。お仕事をされていらっしゃる、学校に通われている方なら毎年1回は健康診断を受けられると思いますが、わんちゃん、猫ちゃんも若いうちには年1回くらいは、血液検査や尿検査などを受けられることをオススメします。またわんちゃん、猫ちゃんは1年で4〜5歳くらい歳をとりますので、7歳を超えてくれば、余裕のある方は年に2回くらいの検診を受けられることをオススメします。

 

腎臓病②

2025年3月21日

続いて慢性腎臓病の治療についてですが

調べたことがある方はわかると思いますが、腎臓病の中でも慢性腎臓病には、すごくたくさんの治療法があります。

あれが良いらしい、これが良いらしい。

先生によっても言うことが違うかもしれません。

同じ先生でも1年前と今で言うことが変わることもあるかもしれません。

飼い主さんとしては、どうしたら良いのか非常に悩まれることがあるのかなと感じます。

これは色々な理由があるのですが、第一に現時点で私が知る限り慢性腎臓病を根治させることが非常に困難だからです。

基本的な治療の目的は「根治」ではなく①生活の質を高めること②寿命を伸ばすこと、となります。

治る病気なら、治療方法は単純明快です。

しかし治らないからこそ、様々な治療法が提案されています。

 治療方法に正解はあるのか?と聞かれると、私個人としては、飼い主さんと動物の数だけあるとお答えさせていただきます。私が考える良い治療は、飼い主さんにとっても、動物にとっても、社会通念上としても良い治療だと思っています。

 

 わんちゃん、猫ちゃんの慢性腎臓病の治療法には、食事療法、投薬療法、皮下補液などがあります。

 

ある子は、腎臓病用の療法食を喜んで食べてくれた。だけどお薬は飲ませられない。

またある子は、食事のこだわりが強くて療法食は食べてくれない。お薬は飲める。通院はちょっと大変。

そしてある子は、ご飯も投薬もだめだけど、連れて来れ、皮下補液をしてもらうと調子が良くなる。など、動物の事情には色々なパターンがあります。

飼い主さんとしても、費用面をはじめ、お仕事が忙しい、投薬が難しい等、きっと色々なご事情やお気持ちなどがあるかと思われます。

 それぞれの事情があるけれども、無理をして全ての治療をすべきなのか?私はそうは思っていません。ご家族ごとのチョイス・選択が重要だと思います。これらのお悩みを一緒に考えていくのが、我々獣医師の仕事の1つだと思っています。ご家庭ごとのお悩みがあると思いますので、どういうことに困っているのかをお伝えいただくと、きっと良い治療になると思います。

 

こういうお悩みは昔よりも増えてきたなと感じております。昔は何ヶ月も症状が続いているけれども病院に連れて来られずに、末期状態となり受診され、もう年だから何もしないという方も結構いらっしゃいましたが、近年は、定期的な健康診断を受けられる方が多くなり、症状が出る前に早期発見されるケースが増えています。またできることはやってあげたいという方が増えている印象です。色々やってあげたいと思うことと、やってあげられないことのジレンマがあるのかと思われます。

私個人としては、昔と比較してしまうので、動物のために一生懸命考えてあげていることが、本当に素晴らしいなと思っています。こんなに一生懸命考えて、定期的に健康診断も受けられ、色々と頑張っているのだから、大丈夫ですよ。自信を持ってくださいってよく思います。動物はどうしても歳をとり、歳をとると病気になってしまいます。どのように付き合ってあげたいか一緒に考えさせて頂きたいなと考えております。また将来的には治る病気になって欲しいなと思っています。私が獣医師になり15年程度ですが、心臓病の手術が成功するようになったり、不治の病であったFIPが治るようになったりと、この15年でびっくりするような進歩が起こっています。いつか腎臓病も治る時代が来ることを期待しております。

腎臓病①

2025年3月21日

今回は腎臓病について書かせて頂こうと思います

腎臓病は、わんちゃんの死因の第3位、猫ちゃんの死因の第1位と言われている病気です。

腎臓は、肝臓の細胞などとは異なり、再生能力が乏しく、一度壊れてしまうと基本的には回復しません。人は正常なケースだと1〜2歳くらいまでに成人と同じくらいの腎臓の機能が備わると言われています。動物も生まれてからしばらくしてから大人と同じ機能になるのではないかと思われますが、この機能がゆっくりと低下していった場合は20%くらいに落ちると、様々な症状が出て、更に0に近づくと命を落としてしまします。

 

腎臓の病気には様々なパターンがあります。

様々なパターンがあるので、偉い先生方が病気を考えやすくするために、「急性腎障害」と「慢性腎臓病」という2種類の大まかに分けてくださいました。

 

急性腎障害とは、急な腎臓のダメージ、数時間~数日の間に急激に腎機能が低下する状態です。

代表的な急性腎障害の原因としては、猫ちゃんの尿道閉塞です。おしっこは腎臓で作られ、尿管を通り、膀胱で一時的に貯められて、尿道を通り陰部から排泄されます。猫ちゃんの男の子は特に、尿道の出口が狭いので、詰まってしまうことがあります。尿が詰まると24時間くらいで、膀胱がパンパンになり、腎臓への障害(ダメージ)が起き始めます。個人的な経験では、初期は何度もトイレに行っては出ない、出ても少量、トイレ以外の場所で、尿をしようとする、血尿が出るなどの症状が出ていると伺います。そして2日以上経ち始めると、食欲が無くなり、嘔吐をし、ぐったりしてくることが多いです。この時点で検査をすると、血液検査にて尿素窒素やクレアチニンなどが重度に上昇しているケースが多いです。尿道のつまりを解除すると真っ赤な血尿が出ることが多く、飼い主さんがびっくりされるケースも多いです。腎臓へのダメージが少ない早期の段階で治療をすれば、助かることが多いのですが、治療が遅れれば遅れるほど、腎臓へのダメージが蓄積していって、場合によっては亡くなってしまうことがあります。また生き残ってくれた場合でも後遺症が残ることがあります。いかに早期に気づいてあげられるかが、とても重要なポイントとなります。

↑この子は、急に何度もトイレに行くようになって、おしっこが出ないということで来院されました。

膀胱の中に、白いモヤモヤがあります。これは膀胱結石です。

↑よくよく、骨盤の後ろのあたりを見てみると、赤い円の中に小さな結石があります。これが詰まったのだと考えられました。男の子の尿道は女の子よりも細く、詰まりやすいです。

↑赤い矢印の先の白い線は尿道カテーテルです。カテーテルを使って、尿道で詰まっていた結石を膀胱の中に戻し、尿を抜きました。青い矢印の先にあるのが、多数の砂粒のような膀胱結石です。この子は、尿検査から溶けないタイプのシュウ酸カルシウムが疑われたのですが、運よく漢方薬で結石が無くなりました。溶けないタイプの結石は通常手術が検討されます。

 

急性腎障害の原因には、他に毒物があります。例えばエチレングリコール、昔はアイスノンの不凍液として利用されていました。私自身も3件くらい経験がありますが、食べて数日して症状が出た状態でご来院された方は残念ながらほぼ助かりません。食べてすぐの元気な状態でご来院頂き、催吐処置をして毒物を排泄させるや、解毒剤の投与をするなどをした子は、幸い助かりました。アイスノンには最近では安全性の高い化合物を使われるようになったので、事故は減りましたが、最近BBQの火起こしの際のジェルタイプの着火剤に、エチレングリコールが入っているのを見かけたので、注意が必要かもしれません。エチレングリコールは甘い味がするのだそうです。またブドウやレーズンも腎臓への毒性があるので要注意です。毒物以外では、レプトスピラ感染症でも起こります。2024年には横浜でも2件ほど発生の報告があります。レプトスピラ感染症には予防接種という方法もあります。

↑健康な時の腎臓の超音波画像・そら豆のような形をしています。

↑尿路感染・腎盂腎炎に伴う急性腎障害を引き起こした時の同一猫の超音波画像

腎臓が少し大きくなっています。

↑よく見ると、尿が出ていく部位である腎盂の拡張を認めます。敗血症の併発も疑われました。感染症と敗血症に伴う急性腎障害の症例。感染のコントロールなどで改善しました。

 

 

一方で、慢性腎臓病とは、「腎臓の障害(ダメージ)」や「一定レベル以下の腎機能低下」が3ヶ月以上続いている状態の総称です。腎臓の障害には腎臓の形態異常や蛋白尿があります。急性腎障害の後遺症として、慢性腎臓病へと移行することがあります。

 慢性腎臓病の症状として飼い主さんが気付かれるのは、わんちゃんと猫ちゃんでは嘔吐と食欲不振が多いです。体重減少に気づかれる方もいらっしゃいます。猫ちゃんでは水をよく飲んで、たくさんのおしっこをするということも比較的多くの飼い主さんが気付かれます。

 慢性腎臓病の厄介なことの1つは、症状が出た時には病状が進んでいることが多く、特にわんちゃんの場合は、一般的にはステージ3あたりから症状が出始め、症状が出て検査をしてもらったら、余命が1年もないと言われてしまうことがあります。腎臓は一度悪くなると回復しないので、とにかく早い段階でトラブルを見つけてあげることが大切になります。

↑加齢に伴う慢性腎臓病の場合は、最初は左右2つある腎臓の内、機能が低下した片方の腎臓が萎縮していくことが多いです。下の正常な腎臓が4cmあるのに対して、3cmくらいになっています。片側だけの腎機能の低下の場合は、もう片側が頑張って働かないといけないので、大きくなることがあります(代償性肥大)。さらに病状が進行して、両方とも腎機能が低下すると、両方の腎臓が小さくなっていきます。

↑別の健康な子の腎臓

 

↑これは猫ちゃんのレントゲンです。猫の正常な腎臓の長さは、背骨2つ分(4cmくらい)くらいで、この子は明らかに両側の腎臓が大きくなっていることがわかります(6cmくらい)。

↑同一の子の超音波画像、腎臓に多数の嚢胞が形成していることがわかりました。多発性嚢胞腎という遺伝性疾患が考えられました。生まれてから徐々に腎臓に液体を溜めた嚢胞が形成されていき、数が増えていき、腎臓の組織が徐々に破壊され、腎機能が低下していきます。予防法はありません。この子がこの画像の状態になった時には、末期の腎臓病でした。

↑これはリンパ腫の猫ちゃんの腎臓です。下は同じ子で健康な時の腎臓です。上は下に比べて、ボコボコした構造をしており、サイズが大きくなっています。上は下の検査をした2ヶ月後の画像です。わんちゃんの腫瘍は比較的ゆっくりと進行することが多いのですが、猫ちゃんの場合は、急激な発症で、進行もとても早いです。

 

腎臓は一度悪くなると基本的には回復しないので、早期発見・早期治療がとても重要となります。また上記のように原因が様々なので、その原因や病期によって、また動物の状態や、飼い主さんのご希望などで治療法が多岐にわたります。

《整形》膝蓋骨脱臼・足が痛そう・足をあげて歩く・スキップする

2023年10月6日

膝蓋骨とはいわゆる「膝のお皿」のことで、英語ではpatellaと呼ばれ、膝蓋骨脱臼はpatellar luxationと呼ばれます。よくある病気のため「パテラ」という通称で呼ぶ方も多いです。

膝蓋骨脱臼は、「膝蓋骨が膝の正面の本来の位置からずれること」を言います。内側にずれたら膝蓋骨内方脱臼、外側にずれたら膝蓋骨外方脱臼と呼びます。両側に脱臼する子も時々います。脱臼の状態を一般的に4段階で評価します。

↑膝関節の構造(外側から見た時)

↑膝蓋骨

↑膝蓋骨と靭帯を外してみた時の構造

 

【膝蓋骨脱臼のグレード分類】

◯グレード1

膝蓋骨は正常な位置にあり、足を伸展させて膝蓋骨を指で押すと脱臼するが、手を離すと元に戻る。

◯グレード2

膝関節は不安定で、膝蓋骨は脱臼したり、元に戻ったりしている。脱臼は指で押すと元に戻すことができる。

◯グレード3

膝蓋骨は常に脱臼状態にあり、指で押せば元に戻るが離すとすぐにまた脱臼する。

◯グレード4

膝蓋骨は常に脱臼状態にあり、指で押しても元に戻らない。

↑膝蓋骨内方脱臼グレード2の犬のレントゲン写真

↑レントゲン写真の模式図

同じワンちゃんの写真ですが、左側は普段はまっている状態で撮影しています

右側はわざと脱臼させて撮影をしています。赤丸が膝蓋骨です。

基本的には触診で診断が可能ですが、レントゲン撮影をすることで、脱臼の重症度や骨の変形などの判定の手助けとなります。

 

【膝蓋骨脱臼の症状】

◯時々後ろ足を挙げてスキップするように歩く

◯寝起きに後ろ足を挙げたり伸ばそうとしたりする

◯散歩をあまり喜ばなくなる、長い距離を歩けなくなる

◯歩いている時や抱っこしようとすると突然キャンとなく

◯膝からパキパキと音が聞こえる

◯足をひきずる、痛がる、歩けなくなる

 

 

【膝蓋骨脱臼の治療】

◯手術

膝蓋骨脱臼は物理的な、構造的な問題ですので、これを大きく改善させることができる方法です。手術の方法(手技)はいくつかあり、患者さんの足の状態に合わせ、それらの手技を組み合わせて実施されます。獣医師によって選択される手技が異なることもあるかもしれません。

<当院で行っている手術手技>

①縫工筋と内側広筋の付着部位を移動することで内側に引っ張る力のモーメントを減らす。

②滑車溝という膝蓋骨が動くレールを深くする。

③関節を包んでいる関節包の緩みを縫い縮める。

④膝蓋骨は膝蓋靭帯が上手く動くための構造の1つですが、その膝蓋靭帯の付着部位が内側にねじれてしまっている子もいるので、付着部位である骨を一部切って移動させる。

大まかには以上ですが、その子その子で、少しずつ足の形が違うので、その子に合ったように微調整をしていきます。

↑手術前のレントゲン写真 両側の膝蓋骨内方脱臼グレード3と4のワンちゃん

↑膝蓋骨が外れており、靭帯の付着部位のねじれが大きいことがわかります

 

↑①〜④の手技を使って手術をしています。膝蓋骨が滑車溝にハマり、足が真っ直ぐになっていることがわかります。

↑同じ子で手術前の横から撮った膝のレントゲン写真

↑膝蓋靭帯は骨に付着しているので、骨の一部を切って、場所をずらしてピンで止めています。足の痛み等の症状は比較的早く改善するケースが多いですが、このように骨を切った場合はくっつくのに時間がかかりますので、しばらくは安静が必要です。

 

あるデータでは手術後に再脱臼がなく良好に過ごせるケースが9割以上とされています。後日ゆるみ等が出るケースもありますが、再手術が適応とされるケースは数%程度とされています。

手術をした方が良いかどうかの判断は、飼い主さんによってもですが、実は獣医師によっても意見が分かれる難しい部分です。

膝蓋骨内包脱臼を持つ小型犬の中には、普段の生活に不便を感じていなさそうな子もいます。健康診断で指摘されて初めて知ったということも多いです。そういった時に積極的に手術をすべきかどうか・・・?色々なデータがありますが、当院で手術を実施しているケースの多くは、症状のある子です。足をひねって脱臼の度合いがひどくなり、脱臼する度に痛がってキュンキュンないている。足が痛いのか座らずにずーっと立っている。また痛み止めを与えても改善がイマイチであるような見ていて可哀想になる子は、飼い主さんも何とかしてあげたいということで、積極的に手術を選ばれるケースが多いです。

 

◯抗炎症剤や鎮痛剤などの医薬品、関節のサプリメント

抗炎症剤や鎮痛剤などの医薬品や関節のサプリメントは、膝蓋骨脱臼の根本的な治療というわけではないですが、痛みが出た時によく実施される治療です。以降も脱臼はするけど痛みは一時的なもので改善するということもあります。定期的に症状が出るケースもありますが、近年は症状を抑えるために長期的に続けても副作用の少ない鎮痛剤もあります。サプリメントは関節だけではなく、その他の幅広い部分の不調に効くものが出ています。

 

◯体重管理と足が滑らないようにする

痛みなどの症状が出てからもですが、症状が出る前にやっておきたいケア方となります。

肥満は足への負担が増加しますので注意が必要です。単純に足の負担だけでなく、生活習慣病の原因となり、二次的に足に異常をきたしてしまうこともあります。万病のもとですので、体重管理は健康管理の第一歩と言えるかもしれません。

滑りやすい場所で走り回るのはあまり推奨されません。マットを敷くなどの対策をするとより安全です。肉球に毛がかかっているとこれも滑ってしまうので、定期的にお手入れをすると良いです。

 

◯鍼灸

当院では、膝蓋骨脱臼の治療として、鍼灸治療も行っています。他院にて手術をしたけど足の調子が思わしくない。足の調子がイマイチで高齢で手術は体力的に難しいなどの子達が、受けています。

 

今回、膝蓋骨脱臼でも内方脱臼の治療をメインで書いております。まだまだこれが完璧な治療法だというものはありません。専門医の先生の中でも意見が分かれることはよくあります。私も少しでも良い治療を提供できればと日々勉強していますが、その子その子で構造と症状の出方が違い、それに伴い治療も違ってくるので、とても難しいトラブルだなと思っています。悩まれる方が多いトラブルなので参考になればと思い書いてみました。足の動きがおかしいなと思った時は、まずはかかりつけの先生とよく相談してみて頂ければと思います。

《予防・歯科》猫の歯周病

2023年8月21日

猫ちゃんもワンちゃんと同様に歯周病になります。

歯周病になると、痛みや、よだれ、口臭、進行すると食欲不振といった症状が認められます。

猫ちゃんは口の中の痛覚が敏感と言われているため、歯周病になると痛みを強く感じているとされていますが、猫ちゃんは症状を隠すことがとても得意で、飼い主さんが中々気付けないことが多いです。

実際に当院で歯周病の治療をした後に、普段からあまりゴハンを食べず、痩せていた子が、みるみる食欲が増し、ふっくらとした健康的な猫ちゃんになったという経験があります。これは歯周病で痛くてうまく食べられなかったのだろうと考えられます。

歯周病は、歯周病菌により顎の骨が溶ける病気で、本人の不快感も問題ですが、腎臓病に大きく関与しているのではないかというデータが出ており、歯のケアは猫ちゃんの健康寿命だけではなく、寿命にも大きく影響があるのではないかと考えられます。猫ちゃんの歯のケアはワンちゃん以上に大変なのですが、やってあげられそうでしたら、積極的に考えてあげると良いです。

 

◯歯周病の猫ちゃんのお口の中の写真

↑ 歯周病の猫ちゃんの歯

水色の丸の歯は明らかに歯の周りが赤くて、歯自体もぐらついています。

青色の丸の歯は一見問題なさそうに見えますが、下のようにレントゲンを撮ってみると顎の骨が溶けていることがわかります。視診である程度の重症度がわかることもあるのですが、レントゲンを撮らないとわからないことも多々あります。

↑ 両方とも顎の骨が溶けています。水色の丸はかなり痛々しいですね。触るととても嫌がります

 

↑ 実はこの歯も歯周病です。猫の犬歯の歯周病は、なんと歯が伸びたように見えます。

↑ 犬歯の周りの骨(上顎の骨)が溶けていることがわかります。

このままだと、痛みが続き、他の歯や体にも悪影響が出るため、これら全ての歯は抜きました。

 

歯がなくても大丈夫なの?ゴハンは食べられるの?というご質問をよくお受けするのですが、市販のキャットフードはドライフードでも問題なく食べられます。逆に痛みが取れて、盛り盛り食べるようになって、太っちゃったという子もいます。

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